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2013/12/16

驚くべきリアル展 スペイン、ラテンアメリカの現代アート-MUSACコレクション- The Marvelous Real - Contemporary Spanish and Latin American Art from MUSAC Collection

 小説家、堀田善衛(1918-1998年)は、大作≪ゴヤ≫(新潮社、1997年)で、「スペインは語るに難い国である。」と書き始めている。日本人は、「スペイン」に対して通俗的な先入観にとらわれているため、スペインの現実についての認識が妨げられているというのだ。「驚くべきリアル」展は、そのスペインの「リアル」を私たちの眼前にさらけ出そうとする。

「驚くべきリアル」展
スペイン、ラテンアメリカの現代アート -MUSAC コレクション-
会期  2014年2月15日(土)―5月11日(日)
     休館日 月曜日(5月5日は開館)、5月7日(水)
     開館時間 10:00-18:00(入場は17:30まで)
会場 東京都現代美術館 企画展示室1F、ホワイエ
     東京都江東区三好4-1-1
     ℡ 03-5245-4111(代表)/03-5777-8600(ハローダイヤル)
     交通案内:東京メトロ半蔵門線・清澄白河駅B2番出口より徒歩9分
      都営地下鉄大江戸線・清澄白河駅A3番出口より徒歩13分

観覧料 一般1,100円/大学生・65歳以上800円/ 中高生600円/ 小学生以下無料
*20名以上の団体は2割引き *本展チケットでMOTコレクションも観覧可能
*身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳の持参者とその付添者(2名まで)は無料。

企画 長谷川祐子(東京都現代美術館チーフ・キュレーター)
    クリスティン・グスマン
     (カスティーリャ・イ・レオン現代美術館 ジェネラル・コーディネーター)
    小高日香理 (東京都現代美術館 学芸員)

 
主催 東京都歴史文化財団 東京都現代美術館
    カスティーリャ・イ・レオン現代美術館
    Acción Cultural Española (AC/E, スペイン文化活動公社)
後援 在日スペイン大使館
助成 公益財団法人 野村財団
協力 NECディスプレイソリューションズ株式会社

【展覧会概要と見どころ】
 スペインにおいては17世紀以降、ベラスケスやゴヤなど、リアリズムの系譜があり、80年代以降のアントニオ・ロペス・ガルシアに代表されるマドリード・リアリズムに継承されている。

 スペイン芸術のリアルは対象が精密に再現されているという描画上の特質を意味するのではなく、スペインの作家のリアルに対する執着の仕方から来ている。そのリアルは超自然なもの、幻想的なものまでを、日々の身の回りのものが手で触れられるのと同様に、地上に引き下ろして対話しようとする欲望から来ている。

 しばしばその表現は日常的な光景やモノの「誇張」(esperpento)という形でみることができる。その「誇張」は生と死との独特の緊張関係から生まれてくるといえるだろう。

 「スペインでは、他のどの国よりも死者が生き生きとしている」という、詩人ガルシア・ロルカの言葉のように、死は生よりも活気をもっている。本展の出品作品には、アクティヴェイト(活性化)された死に裏付けられた重い生が、リアリズムとして表現されている。展覧会にはラテンアメリカの作家の作品も含まれており、それ自体が驚くべき特異性をもった中南米のトロピカルな風土の中で、スペイン的なリアルの感覚がどのように変容し、発酵していったかを見せていく。

 本展は、グローバル化され、デジタル情報化された世界に回収されないリアルの在処―生の過剰が死の影に拮抗してくっきりとしたリアルの姿をみせる、「驚くべきリアル」を生きる事を示唆する展覧会となる。

人間の生と死を深く掘り下げてきたスペイン絵画のリアリズムを受け継いだ現代の絵画
絵画だけが描く事のできる現代人の「リアル」がここにある。孤独、疎外、アイデンティティの追求、愛と憎しみ、生きる事の喜びと葛藤、暴力、深思。社会、政治問題もふくんだ現在に生きる事のドラマのすべて。

驚くべきイマジネーションの飛翔
ダリを生んだこの国が放つ魔術的な世界の変容や信じられないイマジネーションの世界を紹介する。家の中の家具がすべて真っ二つに切断された部屋、馬に乗り大学の建物内を闊歩するビジネススーツの紳士、天の星座が地上にそのまま転写されたかのような光景―。ラテンアメリカの魔術的感覚とスペインの想像力の幸福な結婚の成果。

表現の多様性
ヴィデオ、空間インスタレーション、絵画、彫刻と眼を見張るほどの表現の多様性。寡黙な絵画の上に流れるゆったりとした時間からドキュメントと見まごう映像の過激なスピード感まで、緩急豊かなメディアによって産み出されるとても刺激的な鑑賞体験。

【トークイベント】
「スペインアートの現在(いま)」
マヌエル・オルベイラ(MUSAC館長)、長谷川祐子、クリスティン・グスマン(本展キュレーター)、出品作家4名(エンリケ・マルティ、カルロス・ガライコア、マリナ・ヌニェス、片山薫)によるトーク
日時 2014年2月15日(土)14:00-
場所 東京都現代美術館 B2F講堂

【出品作家】 (アルファベット順)
ピラール・アルバラシン | Pilar Albarracín
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ピラール・アルバラシン《ミュージカル・ダンシング・スパニッシュ・ドール》2001年
MUSAC蔵 ©Pilar Albarracín, Courtesy: MUSAC
*ピラール・アルバラシン(1968年、スペイン、セビリア生まれ)
アルバラシンは、フラメンコや闘牛といったステレオタイプの「スペイン文化」に対し、皮肉とユーモアを交えた分析を行う。《ミュージカル・ダンシング・スパニッシュ・ドール》では、典型的なフラメンコのダンサーの衣装に身を包んだ人形と共に、作家自身も人形の一体かのように振る舞う。鑑賞者は、見せかけの世界に存在するただ一つのリアルである作家本人という魔術に魅せられることとなる。


ララ・アルマルセーギ | Lara Almarcegui
セルヒオ・ベリンチョン | Sergio Belinchón
ビセンテ・ブランコ | Vicente Blanco
*ビセンテ・ブランコ(1974年、スペイン、サンティアゴ・デ・コンポステーラ生まれ)
ブランコは風景写真と広告写真をコラージュによって組み合わせ、ヴィジュアルノベルのようなタッチの作品をつくる。《無題(雪景色シリーズ)》は、同名のデジタル・アニメーションから画像を切り抜いたデジタル・プリント作品。雪に閉ざされた森、倒れている青年、はく製の飾られた洋館というミステリアスな要素から、何か事件が起きているという気配が伝わってくるものの、その全貌は明らかにされない。物語は鑑賞者の想像力によって進行し、その内面のリアルを投影しながら、見えないクライマックスに向かう。


ライモン・チャべス | Raimond Chaves
エレナ・フェルナンデス・プラダ | Elena Fernández Prada
ジョアン・フォンクベルタ | Joan Fontcuberta
サンドラ・ガマーラ | Sandra Gamarra
カルロス・ガライコア | Carlos Garaicoa
カルメラ・ガルシア | Carmela García
*カルメラ・ガルシア(1964年、スペイン、ランザローテ生まれ)
ガルシアは主に女性を被写体とした写真作品で知られ、社会に蔓延するステレオタイプのジェンダー像を幻想的な世界観を通して問い直す。19世紀の風景画に影響を受けており、《無題(楽園シリーズ)》では、ピクチャレスクな水上風景にぽつりと佇む女性たちが写されているが、これはスペイン最大の氷河湖サナブリア湖で撮影されたもの。彼女たちの視線はお互い交わることがなく、現代人の孤独な心情を反映させるかのように、メランコリックな情景をつくりあげている。


アンソニー・ゴイコレア | Anthony Goicolea
ディアンゴ・エルナンデス | Diango Hernández
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ディアンゴ・エルナンデス《分断されたリヴィングルーム》 2006年
MUSAC蔵 ©Diango Hernández, Courtesy: MUSAC [参考図版]
*ディアンゴ・エルナンデス(1970年、キューバ、サンクティ・スピリトゥス生まれ)
キューバ出身のエルナンデスは、ものを本来とは異なる文脈で再利用し、共産主義国家におけるプロパガンダや愛国主義を比喩的に問う。真っ二つに切断された家具やテレビ、タイ
プライターを左右対称に配置した《分断されたリヴィングルーム》は、革命以降も続く思想的分断や国外亡命などキューバにおける諸問題の反映である。ワイヤーによってなんとかその姿を保持しているが、すでに本来の働きを失ったものたちが、キューバ社会の歴史や本質を静かに訴えかけてくる。


片山薫 | Kaoru Katayama
レオニルソン | Leonilson
クリスティーナ・ルカス | Cristina Lucas
ホルヘ・マキ | Jorge Macchi
ヒルダ・マンティージャ | Gilda Mantilla
エンリケ・マルティ | Enrique Marty
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エンリケ・マルティ《家族》1999年
MUSAC蔵 ©Enrique Marty, Courtesy: MUSAC

*エンリケ・マルティ(1969年、スペイン、サラマンカ生まれ)
バロック芸術や演劇に影響を受けたマルティは、家族や友人をモデルにして、日常風景が「不気味なもの」になる瞬間を、さりげなくユーモラスに描写する。スナップショットを元に描かれた約100枚の絵が壁一面を埋め尽くす《家族》では、作家の家族があの手この手でカメラにアピールをする姿が見られる。一家団欒の親密な空間は、ほんの少しの絵画的誇張によって、ゴヤの「黒い絵」にも通ずるような狂気を孕んだものとなる。


フリア・モンティージャ&フアンデ・ハリージョ | Julia Montilla & Juande Jarillo
MP&MP ロサード | MP & MP Rosado
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MP & MP ロサード《野良犬のように》2003年
MUSAC蔵 ©MP&MP Rosado, Courtesy: MUSAC
*MP&MP ロサード(1971年、スペイン、サンフェルナンド生まれ)
兄弟で活動するMP&MP ロサードは、双子であるが故のアイデンティティの追求をテーマに作品制作を行う。《野良犬のように》シリーズでは、セビリアの街中で見つけた平凡な景色を背景に、壁を向いて横たわったり、疑いのまなざしで互いを見る、彼ら自身の姿が描かれる。背景の複製化された扉や、いびつな影は違和感をもって、見る者にアイデンティティの所在を問いかけてくる。


マリナ・ヌニェス | Marina Núñez
*マリナ・ヌニェス(1966年スペイン、パレンシア生まれ)
ヌニェスは「ノーマル」な女性像をお仕着せようとする父権的現代社会に疑問を抱き、抑圧されがちな身体と精神状態の異常性を直視させる作品を作る。《モンスター》シリーズでは、体の一部が解体、変化していく女性達がじっとこちらを見つめその深淵を共有しようとしている。目をそらさずその瞳を覗き込んだ時に鑑賞者が対峙するのは、自身の内部に住まう他者性や異常性そのものである。


タティアナ・パルセロ | Tatiana Parcero
ホルヘ・ピネダ | Jorge Pineda
ミゲル・アンヘル・ロハス | Miguel Ángel Rojas
フェルナンド・サンチェス・カスティーリョ | Fernando Sánchez Castillo
*フェルナンド・サンチェス・カスティーリョ(1970年、スペイン、マドリード生まれ)
権威の象徴となるモニュメントや建築、乗り物などを利用したアイロニカルなプロジェクトで、権力のあり方を問うカスティーリョ。《馬に捧げる建築》では、スーツ姿の男性が白馬に乗って無人の大学内を徘徊する。これはフランコ政権時に建てられたマドリード自治大学哲学科の校舎で、扉や通路は高く、機動隊が馬上から学生の蜂起を制圧できるように作られている。夢のようなイメージと裏腹に、規制・弾圧・暴力の痕跡が浮かび上がる作品。


マルティン・サストレ | Martín Sastre
ハビエル・テジェス | Javier Téllez
*ハビエル・テジェス(1969年、ベネズエラ、バレンシア生まれ)
テジェスは精神病患者とのコラボレーションで、既存の物語を読み直し、フィクションとドキュメンタリーの狭間にある新しい映像作品を作ることで知られている。《保安官オイディプス》は、ギリシャ悲劇「オイディプス王」を西部劇にアレンジしたもので、役を演じる患者は能面をつけている。その見た目の異様さとは裏腹に物語自体は原作に忠実に進むが、最後には役者の仮面が外され、見る者にはカタルシスが引き起こされる。

【日本スペイン交流400周年】
 スペインへ向けた慶長遣欧使節団派遣400周年を記念する「日本スペイン交流400周年事業」(2013年6月から2014年7月まで開催中)の一環として、本展が開催される。カスティーリャ・イ・レオン現代美術館(MUSAC)の珠玉のコレクションの中からラテンアメリカを含むスペイン語圏の27作家の90年代以降の作品約50点を展覧できる。

【カスティーリャ・イ・レオン現代美術館】
 カスティーリャ・イ・レオン現代美術館は、2005年にスペイン北西部のレオン州県都、レオン市に誕生し、「“現在”のミュージアム」になることを目指して、時代を映す現代美術を精力的に集めている。東京とレオン市、2つの場所で「現在」を見つめる美術館同士のコラボレーションによって、地理的・文化的距離を超え、異なる思考が出会うプラットフォームが形成されることを目指している。

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