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2013/09/10

第9回ヒロシマ賞をコロンビア人アーティストのドリス・サセルドが受賞 Hiroshima Art Prize: Doris Salcedo, colombiana

 ヒロシマ賞は、現代美術の分野で人類の平和に貢献した作家の業績を顕彰し、世界の恒久平和を希求する「ヒロシマの心」を現代美術を通して広く世界へとアピールすることを目的として、広島市が1989年に創設された。3 年に1回授与されるこの賞は過去8組のアーティストが受賞しており、今回、第9回目のヒロシマ賞受賞者にコロンビア・ボゴタ生まれのドリス・サルセド氏が決定した。
 2014年7月(予定)には第9回ヒロシマ賞の授賞式が行われ、あわせて、広島市現代美術館においてドリス・サルセドのヒロシマ賞受賞記念展を開催される。

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≪ドリス・サルセド/Doris Salcedo≫
 ドリス・サルセドは、自国コロンビアをはじめ、世界で横行する暴力や差別などに対して、芸術が強い抵抗の力を持ち得ることを一貫して示してきた作家。1958年にコロンビアの首都ボゴタに生まれたサルセドは、ボゴタのホルヘ・タデオ・ロサノ大学で美術の教育を受けたのち、1980年代の初めに渡米し、ニューヨーク大学の大学院で彫刻を学ぶ。その後、80年代半ばにボゴタへ戻り、90年代の初めまでコロンビア国立大学で後進の指導に当たりながら、制作活動を続ける。
 1990年代前半からヴェネチア・ビエンナーレやサンパウロ・ビエンナーレなどの国際美術展に参加し、日常の家具や衣服などを彫刻として再生させながら、暴力による犠牲者の記憶を静かに訴える作品や、空間全体を死者を悼むための場に変容させるような大規模なインスタレーションによって、国際的な評価を確立してきた。寡黙でありながら、人を引きつけるその作品は、扱われるテーマを観る者の心に強く訴えかける。
 2007年には、ロンドンのテート・モダンの床に167メートルにわたる亀裂をつくり出したインスタレーションで、さらにその名を世界に知らしめた。2010年にはスペイン文化省主催のヴェラスケス造形芸術賞を受賞している。また2015年の2月からは、シカゴ現代美術館を皮切りにニューヨーク、ロサンジェルスを巡回する大規模な回顧展が開催される予定であり、サルセドの芸術に対する評価は決定的なものとなるだろう。

≪第9回ヒロシマ賞授賞決定理由について≫
 「サルセドの第9回ヒロシマ賞受賞の理由としては、暴力や差別などの社会的、政治的な問題に一貫して関わってきた作家であり、人類史上類を見ない暴力がもたらしたヒロシマの悲劇を、独自の方法で現代と結び付け、観る者に訴えかける展示が期待されること。そして、暴力の犠牲となった人々に寄り添いながら、死の悼みを超え、再生への願いを込めた作品を制作するなど、その創作活動は、ヒロシマ賞の趣旨に相当すると高く評価されました。また、南米の作家として初めてのヒロシマ賞受賞者であり、被爆70周年をまもなく迎えようとするなか、これまで広島の地を訪れたことのない作家がヒロシマに改めて向き合うことは、今後ヒロシマをどのように世界に伝えていくかを考える上で貴重な機会となると考えられます。」

Salcedo_istanbul
二つの建物の間に積まれた1550個の椅子 2003、第8回イスタンブール・ビエンナーレ、Photo by Sergio Clavijo

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《シボレス》2007、テート・モダン、タービンホール/ロンドン、Photo by Marcus Leith/Andrew Dunkey

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《無題(衣装箪笥)》1992

≪受賞にあたってのドリス・サルセドからのコメント≫
 「私の作品に対し、このような名誉ある賞を授けてくださり皆様に御礼申し上げます。
この賞を謹んでお受けするとともに、今回の受賞は、私の作品に対する評価というだけでなく、今後もその苦しみが忘れ去られることのないよう、人類への暴力行為の犠牲者の体験をテーマに取り組んでいく責任を意味するものだと受け取っています。 広島は紛れもなく、その悲惨で恐ろしい体験を通じ、今では我々の道徳的拠り所の一つであり、すべての人々に感銘を与える忍耐力と回復力を示す例となっています。」
ドリス・サルセド

Salcedo_portrait
ドリス・サルセド Photo by Rui Gaudêncio, 2011

◇略歴、主な展覧会歴
1958年生まれ、コロンビア共和国ボゴタ出身・在住
1980年 ホルヘ・タデオ・ロサノ大学美術学科卒業
1984年 ニューヨーク大学大学院修了
1989-91年 コロンビア国立大学教授

◇主な個展
1985年 「Nuevos Nombres」(Casa de La Moneda/ボゴタ)
1994年 「La Casa Viuda」(Brooke Alexander/ニューヨーク)
1995年 「La Casa Viuda VI」(White Cube/ロンドン)
1998-99年 「Unland/Doris Salcedo」(ニューミュージアム/ニューヨーク)
1999年 「Unland/Doris Salcedo」(サンフランシスコ近代美術館)
2000年 「Doris Salcedo, Tenebrae: 7 de noviembre, 1985」(Alexander and Bonin/ニューヨーク)
2001年 「Doris Salcedo」(カムデン・アーツ・センター/ロンドン)
2007年 「Shibboleth」(テート・モダン/ロンドン)
2010-12年 「Plegaria Muda」(Museo Universitario, de Arte Contemporaneo/メキシコシティ、Mederna Museet,Malmö/スウェーデン、Fundação Calouste Gulbenkian/リスボン、国立21世紀美術館/ローマ、White Cube/ロンドン、Pinakoteca do Estado de São Paulo/ブラジル)

◇主な国際美術展
1993年 Aperto 93、ヴェネチア・ビエンナーレ
1995年 カーネギー・インターナショナル(ピッツバーグ/ペンシルベニア州)
1999年 リヴァプール・ビエンナーレ
2002年 ドクメンタ(カッセル/ドイツ)
2003年 イスタンブール・ビエンナーレ

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《寡婦の家 IV》1994、Photo by D. James Dee

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《争いの行為》2007

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■ヒロシマ賞について

主旨
 美術の分野で人類の平和にもっとも貢献した作家の業績を顕彰することを通じて、広島市の芸術活動の高揚を図るとともに、「ヒロシマの心」を広く全世界にアピールし、人類の繁栄に寄与する。合わせて、この賞を受賞した作家の展覧会を開催して芸術の発展に寄与し、ヒロシマ賞の意義を高める。

過去の受賞者
第1回(1989年決定) 三宅一生/デザイン
第2回(1992年決定) ロバート・ラウシェンバーグ/美術
第3回(1995年決定) レオン・ゴラブ&ナンシー・スペロ/美術
第4回(1998年決定) クシュシトフ・ウディチコ/美術
第5回(2001年決定) ダニエル・リベスキンド/建築
第6回(2004年決定) シリン・ネシャット/美術
第7回(2007年決定) 蔡國強/美術
第8回(2010年決定) オノ・ヨーコ/美術

選考の基準
・ 美術の分野(平面、立体、映像、デザイン、建築等)で評価の高い活動を行っている個人あるいはグループ。
・ ヒロシマの心にふさわしい制作活動を行っている個人あるいはグループ。
・ 美術館で単独の展覧会を開催する意義がある個人あるいはグループ。
・ 国籍、年齢は問わない。

選定方法
世界各地の美術館長、美術評論家等で構成する「推薦委員」と、過去の受賞者からなる「特別推薦委員」から推薦された作家等をとりまとめ、国内の美術館長、美術評論家等で構成する「選考委員会」で絞り込みを行う。
その結果をもとに、有識者、美術専門家等で構成する「広島市ヒロシマ賞受賞者選考審議会」で、受賞候補者を決定する。

広島市ヒロシマ賞受賞者選考審議会委員
岡部あおみ(美術評論家、元武蔵野美術大学教授)、妹島和世(建築家、妹島和世建築設計事務所)、高階秀爾(大原美術館館長、西洋美術振興財団理事長 ※会長)、永野正雄(広島経済同友会代表幹事、株式会社テレビ新広島代表取締役社長)、南條史生(森美術館館長)、原田佳子(広島女学院大学名誉教授)、深山英樹(広島商工会議所会頭、広島ガス(株)代表取締役会長)、福永治(広島市現代美術館館長)、部谷京子(映画美術監督)、前川義春(公立大学法人広島市立大学芸術学部長)、松井一實(広島市長)
※2013年7月9日現在

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 コロンビアは、政府と左翼ゲリラ「コロンビア革命軍(FARC)」との半世紀にわたる内戦終結に向けて、今年5月キューバにおいて、和平議題のひとつである農地改革の合意達成を目指して双方の交渉が行われた。

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